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重要事項説明を実施して売買契約を阻止(?)しました

こんにちは。ヒトツボ社長の明神(みょうじん)です。

今日はある意味、業務日誌のようなブログになります。不動産購入を検討中の方や、逆に売却(処分)をお考えの方に読んで頂ければと思います。

プロローグ

『この契約、無くなりますよ』

ここ一ヶ月で2回、同じセリフを2人の方にお伝えしました。お一人は物件の売主様。もうお一人は案件をご紹介下さった司法書士の先生です。

物件所在地は大阪府某所。弊社事務所より約50kmほど離れた場所です。当地へは都合4回訪問しました。

  1回目:打ち合わせ

  2回目:打ち合わせ&現地調査

  3回目:役所調査

  4回目:買主様へ重要事項説明

そして4回目の訪問後に買主様より「誠に申し訳ないが今回の購入を断念します」とご連絡が有りました。

なぜ契約中止となったか?

不動産は「目に見えない部分」が非常に重要です。法律用語で『瑕疵(かし)』という言葉がありますが、これは「契約当事者が予測できない、又は顕在化していない物件の欠点や不足」という意味です。

これによって契約成立後にトラブルや紛争になることを防止するために、不動産取引には重要事項説明が有ります。そしてこの重要事項説明は国家資格を有する宅地建物取引士が行うことと規定されています。

今回の物件において、主な問題点は3点有りました。

  ①再建築ができない

  ②袋地である

  ③給排水設備に不安が有る

写真で見ると、だいぶ古そうではあるけど普通のお家に見えますよね。内外装とも築50年越えとは思えないほど状態が良く、恐らく今後5~10年以上は問題無く使用できそうに見受けられました。

でもこの3点の問題は看過できない内容です。

再建築できない

再建築とは、いわゆる建て替えのことです。現存する建物を取り壊して新たなお家を新築する…当然できると思いますよね。だって今目の前に建ってるんだから。

でも本物件は再建築不可です。なぜなら接道義務を果たしていないから。

本物件の前面はこのようになっていまして、前面敷地は他人所有の私有地でした。現行の建築基準法では『幅員4m以上の道路に間口2m以上接していないと建物の建築は(原則)不可』と規定されています。

50年以上前の新築当時、建築主と役所の間でどのようなやり取りが有って、どういう経緯でこの建物が建築されたのか、今では知る由も有りません。

少なくとも現行の法規制では再建築不可と説明する以外に、宅地建物取引士としては選択肢が有りません。

袋地である

袋地とは、道路に接していない土地のことです。上図のような場合、袋地を利用するには南側の他人所有地を通行する必要があり、ここでいくつか問題が出て来ます。

  ①現在通行できる状態か?

  ②通行に関する契約や登記はあるか?

  ③袋地・囲繞地とも所有者が変ったらどうか?

  ④現状では再建築ができない。

今回の案件では①はクリアしていました。囲繞地の所有者も(条件付きではありますが)通行を許可していました。

しかし他の問題を解決するのは容易ではありません。

給排水設備に不安が有る

最後は給排水設備=ライフラインについて。

現状、上下水道とも使用可能で生活に困る事はありません。実際に昨年まで売主様がお住まいで居られました。

しかし50数年使用された配管類はそれ相応に老朽化していると予測され、今後配管類・水道設備の補修や交換が必要になるのは目に見えています。

ここでもやはり、接道の無い袋地であることがネックになります。つまり公道地下に埋設されている水道本管から本物件に至るまでの引込管が他人所有地を通っており、配管メンテナンスが容易ではありません。

さらに生活排水(雑排水)・雨水の排水経路は配管図面等が無いため詳細が不明で、「恐らくこの辺り(の地下)を流れて行っているのでは」という曖昧な状態でした。

じゃあどうすればいいの?

こうした諸問題を解決して行く方法はもちろん有ります。

袋地である事を解消する一番の方法は、公道へ通ずるまでの敷地を買い取る事です。上下水配管の調査・メンテナンスも専門の水道業者へ依頼すれば可能でしょう。

でも不動産売買において「売主が様々な問題や不安を全て解消し、完璧な状態にして買主へ引き渡すこと」というきまりは有りません。

重要なのは買主がそうした諸問題を理解・納得しているかどうかです。きちんと状態を把握した上で買う・買わないの判断をするために、宅地建物取引士による重要事項説明が有ります。

今回の売買取引は、当事者間で価格も含めた商談はほぼまとまっており、所有権移転登記の依頼を受けた司法書士の先生が、契約に不安を感じて私に連絡下さりました。

事前相談の段階で、冒頭の通り『この契約は中止になるのでは』と予想できました。案の定、売主・買主ともに本物件の瑕疵について理解されておらず、契約中止となりました。

まとめ

以上のように、不動産は目に見えない部分が重要です。

法律上の規制はどうか・権利関係はどうか・隣地所有者は誰か・ライフラインの状況etc

逆に言えば目に見える建物内外装や住宅設備等は、後からいくらでも変更可能なのです。

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